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東京高等裁判所 昭和62年(ネ)315号 判決

控訴人

右代表者法務大臣

遠藤要

右指定代理人

藤宗和香

山諸剛二

有賀邦彦

白坂雅樹

被控訴人

日本火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

品川正治

右訴訟代理人弁護士

飯沼春樹

児玉譲

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文第一項同旨

第二  当事者の主張及び証拠

原判決事実摘示のとおりである。

ただし、次のとおり付加する。

(控訴人の当審における陳述)

原判決は、国税徴収法(以下「徴収法」という。)二二条五項の解釈を誤つたものであり、この誤つた解釈に基づき控訴人の本件交付要求は本件競売事件に係る配当要求の終期に遅れたものであるから、控訴人は、本件交付要求によつて配当を受けることができないとして、被控訴人の控訴人に対する本訴請求を認容したものであるので、原判決は取り消されるべきである。以下、その理由について主張する。

一  原判決は、徴収法二二条五項の交付要求には、民事執行法八七条一項二号が準用され、その終期は配当要求の終期に限定されると解すると判示する。

しかしながら、徴収法二二条五項の交付要求は、同法八二条一項の交付要求(以下「通常の交付要求」という。)とはその本質を異にするものである。すなわち、通常の交付要求は、滞納者の財産について、既に強制換価手続が開始されている場合に、その手続に参加してその換価代金から配当を受け、それにより滞納者の租税を徴収する制度であるから、これは、私法上の一般債権者が債務者の財産について配当に加わるためにする配当要求と共通の性質を有しているのであり、それ故に、通常の交付要求においては、その手続は民事執行法における配当要求に準じて処理することが妥当なのである。したがつて、通常の交付要求においては、配当要求債権者に準ずるものとして交付要求をすることができる時期について民事執行法八七条一項二号が準用される合理的理由があるのである。これに対して、徴収法二二条五項の交付要求は、質権、抵当権の目的たる不動産が譲渡された場合、この不動産は債務者である譲渡人の責任財産ではなくなるのであるから、この者が租税を滞納していたとしても、もはやこの財産から租税を徴収することはできなくなる筋合いのものである。しかしそうすると、その質権、抵当権が右租税より劣後するものであつた場合には、質権者、抵当権者は目的物の譲渡という偶然の行為によつて利益を受けることとなり、この結果は公平ではないとの考慮から、譲渡によつて担保権者が受ける利益を譲渡人の租税に充てようとする趣旨のもとに、徴収法が二二条一項で譲渡後の換価処分によつて民事執行法八七条一項四号により担保権者に配当される金額のうちから、譲渡人である滞納者の租税を徴収することができる権限を国税につき付与するとともに、同条五項でその徴収の方法の一つとして交付要求の制度を採用することにしたものである。この意味からこの交付要求は、民事執行法八七条一項二号に係るものではなく同条一項四号に係るものであり、通常の交付要求とはその本質を異にする(すなわち、通常の交付要求は、執行手続における債務者に対する債権に限つて認められるものであるが、この交付要求においては、執行手続における債務者は譲受人であり、交付要求における債務者は担保権者である。)ものである。それ故に、その要件及び手続においても通常の交付要求のそれとは異にしているのである(要件については徴収法二二条一項、手続については同法施行令六条二項、三項)。

もとより、この徴収法二二条五項に係る交付要求も通常の交付要求と同じく他の執行機関の行なう強制換価手続に参加して便益を受けようとするものであるから、いつまでに交付要求をすべきであるかについては自ずから時期的に制限があることはいうまでもない。しかし、右にみたとおり、この交付要求は、通常の交付要求とはその本質を異にするものである以上、通常の交付要求の場合のように、これが民事執行法上の配当要求と共通の性質を有するとして、これを配当要求に準ずるものとしてその手続を民事執行法における配当要求に準じて同法八七条一項二号の配当要求債権者として処理することはできないのである。

そして、徴収法二二条五項の交付要求は、譲渡によつて担保権者が受ける利益を譲渡人である滞納者の租税に充てようとする趣旨で、担保権者が民事執行法八七条一項四号により受ける配当金額のうちから右租税を徴収するための方法の一つとして認められた制度であるので、担保権者において受けるべき配当金額がある限り、換言すれば、現実の配当が終了するまで、すなわち執行機関において配当すべき金額を担保権者に交付するときまで交付要求をすることができるものと解するのが相当であるというべきである。このことは、次のことからも裏付けることができるのである。すなわち、民事執行法が配当要求の終期までに配当要求をしなかつた債権者は配当にあずかれないとした趣旨は、旧民事訴訟法においては、競落許可決定の言渡しによつて所有権が移転するとされていたので、それまでは多くの債権者の配当加入を認めることとして、債務者の財産が競落人に移転する競落期日の終りまで配当要求ができるとしていた(旧六四六条二項)が、このために競売期日において最高価競買申出人が出た後の競落期日前に、一般先取特権者の配当要求あるいは国税の交付要求があると、その要求額によつては、無剰余となつて競売手続が取り消されてしまうことになり(旧六五六条)、手続が後に発生した事情によつて無駄となるばかりでなく、買受申出人の地位が不安定となるので、このような不合理な事態を避けるために、民事執行法は買受けの申出をした以後はその手続が取り消されることのないよう考慮して物件明細書を作成して売却条件が明らかとなる直前の段階までの配当要求のみを認めることとし、そのために執行裁判所は、あらかじめ配当要求の終期を定めて、これを公告し(同法四九条一項、二項、一八八条)、その配当要求の終期までに配当要求をしなかつた債権者は配当にあずかれないこととしたのである(同法八七条一項二号、なお、この配当要求の終期は、同時に債権届出の終期でもあるので(四九条二項、一八八条)、これによつて、執行裁判所としては当該不動産から配当を受けようとする債権額を把握でき、無剰余に対する判断(六三条一項)ができることになつている。)。しかるところ、徴収法二二条五項の交付要求は、強制換価手続の対象となつている当該不動産から配当を受けるものではなく、担保権者に対する配当金額から交付を受けるものであるから、配当要求の終期後に交付要求を認めても前記不合理な事態が生じるということはないのであり、したがつて、又、不合理な事態を避けるために民事執行法が採用した前記各規定の趣旨を没却することになるということにもならないのである。すなわち、徴収法二二条五項の交付要求の場合には通常の交付要求の場合のように配当要求の終期までに交付要求することを求めなければならない必要性はそもそも存しないということからも明らかといわなければならない。

二1  ところで、原判決は、徴収法二二条五項の交付要求を配当要求の終期に限定されると解する理由として、この交付要求も通常の交付要求と同じく執行機関に対する交付要求であることには変わりがないから、この交付要求につき特別な手続規定がない以上、その手続は通常の交付要求に準ずるものであることが予定されているというべきであると判示する。

しかしながら、これは、前述したとおり、徴収法二二条五項の交付要求が通常の交付要求とはその本質を異にするものであつて、通常の交付要求においては配当債権者として滞納者の財産である不動産に係る換価代金から配当を受けるものであるのに対し、この交付要求においては担保権者が受ける配当金額のうちから交付を受けるものであり、配当債権者として配当を受けるものではないということ及び右各交付要求の終期は各々の交付要求の法的性格ないしは配当要求の終期を早めた民事執行法の立法趣旨を勘案して合理的に解すべきであるということを忘却ないしは軽視した極めて形式論的な解釈であつて、到底是認し得ないものといわなければならない。

2  また、原判決は、徴収法二二条五項の交付要求の終期が財産の譲渡の前後によつて差異を認めると、担保権者の地位が財産の譲渡の前後で不均衡が生ずるとして、これは、徴収法二二条の趣旨に合致しない旨判示する。

しかしながら、徴収法二二条一項は、前述したとおり、財産の譲渡によつて担保権者が受ける利益を譲渡人である滞納者の租税に充てようとする趣旨のものであるから、担保権者が右利益を現実に収受する時までこの交付要求をすることができるとする方が、むしろ右趣旨に合致するものというべきである。そもそも、この交付要求は通常の交付要求のように民事執行法八七条一項二号に準じる性質のものではなく、特別の考慮から徴収法で特に民事執行法八七条一項四号により担保権者が配当を受ける金額から徴収するために認めた特別の手続であつて、同条一項二号を準用する余地のない交付要求であるから、両交付要求を同じ次元のものとして比較衡量することはできないのである。そればかりでなく、国税と抵当権によつて担保される債権との関係については、徴収法一六条の規定によつて調整されているところ、抵当権者においては、この関係を把握するために抵当権設定者の滞納の有無を確認するための手段として、国税通則法一二三条に規定する納税証明書の交付を受ける(たとえば、抵当権設定者を通じるなどして)という方法が制度として確立されているのであり、また、抵当権の移転により抵当権者としての地位を継承した者においても、右に述べた抵当権者の場合と同様、当然に抵当権設定者の滞納の有無について把握しうるものなのである。しかるに、右の関係から本来配当にあずかれない抵当権者が、配当要求の終期の経過によつて配当をうけることもあり得るが、これは、国税側の一方的事情といつた偶然の結果にすぎなく、いわば反射的利益にすぎないのであるから、抵当権者が配当要求の終期後になされた徴収法二二条五項の交付要求によつて、この反射的利益を受け得なくなつたとしても、あながち不合理とまではいえないのである。

3  更に、原判決は、原判決摘示の事実中、被告の主張三、3及び4のような事情があるとしても、原判決の結論を左右するには足りないと判示する。

しかしながら、民事執行法四九条二項が、裁判所書記官が「租税その他の公課を所管する官庁又は公署」に対し債権届出の催告をすべき旨を規定した目的は、剰余の有無の判定のほかに、租税債権等の確保という国家的ないし地方財政上の公益的見地から交付要求の機会を与えることにあるところ、右「官庁又は公署」の範囲については、旧法下の実務と同じであるとされ、具体的には「不動産所有者に対して、滞納租税債権等を有する蓋然性のあるすべての公課主管官庁」をいうと解されているのである。そうすると、旧民事訴訟法及び民事執行法は、そのいずれもが、「官庁又は公署」の範囲について、物件の現在の所有者に対して債権を有する官公署のみを予定しており、前所有者に対して債権を有する官公署までも予定してはいないのである。そして、裁判所における執行実務も、右の解釈によつて取り扱われていることは、原審において主張したとおりである。かかる事情であるにもかかわらず、原判決のように徴収法二二条五項の交付要求の終期について、通常の交付要求の終期と同様に解するとすると、同条同項によつて国税を徴収しようとする税務署には競売手続の開始、配当要求の終期等を知り得るための機会が与えられていないのに、配当要求の終期までに交付要求をしなければならないという事態におちいり、事実上同条同項の交付要求ができないこととなり、この制度を空文化させることになつてしまうのである。したがつて、この点の考慮を欠いた原判決は失当であるといわなければならない。

(被控訴人の当審における陳述)

一  控訴人は、徴収法二二条五項は同条一項が滞納者の財産譲渡後の換価処分により民事執行法八七条一項四号で担保権者に配当される金額のうちから滞納者の租税を徴収する方法として交付要求の制度を採用しているから、この交付要求は現実の配当が終るまでなしうるとし、また民事執行法八七条一項二号ではなく同条一項四号に係るものであり、通常の交付要求とその本質を異にすると主張する。

しかしながら、徴収法は、交付要求につきその手続、制限等一連の規定を同法第五章第二節(八二条以下)に纒めて規定するだけで、同法二二条五項の交付要求につき特別の手続規定を有しないのであり、滞納者の財産譲渡後は本来同法八二条の交付要求による徴収は不可能であるから、特別かつ例外的に同法二二条五項により同法八二条の交付要求を拡張しこれによる徴収を認めているにすぎないのである。そして、手続的にも同法二二条五項の交付要求は、執行機関による強制換価手続を前提にして執行機関に対してなすものであるから、八二条のそれと何ら変わるところはなく執行裁判所の配当手続に参加するものであり、民事執行法八七条一項二号により配当要求の終期に拘束されるものと解すべきである。もともと、徴収法二二条五項は、滞納者がその財産を譲渡しなければ配当要求終期の拘束のもとで交付要求によりえられた利益につき、譲渡後においても特別に交付要求による徴収を認め、もつて担保権者との公平を図る趣旨であるから、譲渡後は国は配当要求の終期に拘束されないとすると、却つて国側の一方的有利に偏し同条項の趣旨を没却することになる。

更に、控訴人は、徴収法二二条五項の交付要求は民事執行法八七条一項四号に係ると主張するが、それは、右条項が担保権者の受ける配当の全部又は一部が自動的に税務署に移転したり担保権者が受けた配当の全部又は一部を税務署に移転すべく義務付けられているなど、担保権者への配当が国税の徴収に直結する場合ならば理解できよう。しかし徴収法二二条五項は、いくら担保権者が配当を得るにせよ、執行機関にたいして交付要求をしないと国税を徴収できないとする趣旨であるから、担保権者が配当を受けることと国税の徴収とは当然には直結しないのであり、民事執行法八七条一項四号を適用すべき理由はない。

二  控訴人は、民事執行法八七条一項二号の趣旨は配当要求の終期を設けないと競売期日に最高価競買申出人が出た後国税の交付要求などにより無剰余による手続取消の事態となり、買受申出人の地位の不安定と手続の無駄となるとする点にあるところ、徴収法二二条五項の交付要求は、担保権者に対する配当金額から交付を受けるだけであるからかかる弊害は無く、配当要求の終期の拘束を受ける必要はないと主張する。

しかしながら右主張は、民事執行法八七条一項二号がその重要な趣旨として差押債権者の保護を含んでいることを無視したものである。本来競売手続は差押債権者の利益のために進められるもので、差押債権者が配当を受けられなくなる無益な手続の追行を回避できるように、民事執行法八七条一項二号は配当要求の終期を設定してその時点で差押債権者が配当を受けられるかどうかの確認に供しているのであり、この理は担保権者が競売申立人である場合も同様である。即ち、現実の配当が終るまで交付要求を認めそれまで担保権者には配当の得られない手続を徒に続行させることは、決して民事執行法八七条一項二号の認めるところではない。

三  更に、控訴人は、滞納者のもとで本来配当にあずかれない担保権者は、配当要求の終期の経過により配当を受けることがあつても、それは国税側の偶然の事情による反射的利益にすぎないから、配当要求の終期後になされた交付要求により犠牲にされても不合理とはいえないと主張する。

右にいう担保権者が本来配当にあずかれないというのは、法定納期限が先に到来した国税債権にその後設定登記された担保権は劣後する(徴収法一六条、二六条二項)からであるが、その場合でも、国税債権はそのまま当然に優先するのではなく、配当要求の終期までに適式に交付要求しなければならない。かかる関係は、権利実現の在り方として、あたかも、先順位の担保権といつても設定登記をともなわなければ後から設定された担保権に優先して弁済を受けることができないという民法一七七条所定の関係に類似している。したがつて、配当要求の終期までに交付要求のなかつた国税債権に対して、本来劣後するはずの担保権が優先してしまうのは、先に設定されたが設定登記を欠く担保権に対する関係と同様、後者の担保権のもつ固有の利益であつて、単なる反射的利益にすぎないとすることは到底認められない。

四  控訴人は、徴収法二二条五項の交付要求を配当要求の終期をもつて拘束すると、民事執行法四九条二項の債権届出催告の相手方に前所有者に債権を有する官公署までは含まれないことから、税務署は配当要求の終期を知る機会がないので右交付要求ができなくなると主張する。

しかしながら、民事執行法四九条二項は他方で配当要求の終期は公告される旨定めており、公告があつた以上交付要求をする税務署もこれに関知しないとはいえない。又、国においては、国税滞納者がその財産を他に譲渡し滞納処分を執行すべき財産が他にない場合は、この譲渡した財産を探知するのは容易であり、かつ、どの財産につき前記債権届出催告があつたかの情報入手も容易であるから、徴収法二二条五項の交付要求を時期に遅れることなくなしうるはずである。国は、かかる交付要求が配当要求の終期に拘束されないとの前提に立つているから、このような可能な努力を尽くさないでいるのであり、その結果配当要求の終期を遵守しにくい状態になつているにすぎない。したがつて、配当要求の終期の拘束を認めても、決して徴収法二二条五項を空文化するものではない。

理由

一当裁判所も、本件について、被控訴人の請求は理由があり認容すべきであると判断するものであつて、その理由は左記に付加するほかは、原判決理由と同一であるからこれを引用する(なお、原判決二一枚目表六行目の「限定することによつて、」の次に「債権者の範囲を確定し、債権者らの各債権額を把握することができるなど」を加える。)。

1  控訴人は、徴収法二二条五項の交付要求は、担保権者の受けるべき配当金から徴収するものであるから民事執行法八七条一項四号によるものであり、配当要求の終期に拘束されないと主張する。

民事執行法八七条一項四号所定の担保権者は、執行記録上その権利者であることが明らかであり、当然に配当を受け得る地位にある者とされるから、配当要求をしなくても配当にあずかれることができる。したがつて、配当要求の終期の制約を受けるかどうかはそもそも問題とならない。これに対し、国税債権は本来滞納者の総財産から徴収を受ける債権であつて当然には配当を受ける地位を有するものではない(国税の優先徴収権は弁済を優先的に受けることに関する。)。ところで、徴収法二二条五項の交付要求は、同法一項所定の不動産譲渡がなされたとき、国税徴収を譲渡前の滞納者の財産からでなく、担保権者の受ける配当金からなし得ることを定めたものであるが、この場合でも交付要求自体は明文上必要とされているのであるから、それがないかぎり配当を受けることはできず、この意味合いにおいて、国税債権の配当手続上の地位自体は徴収法八二条の交付要求一般の場合と何ら異なるところはない。同法二二条五項の交付要求が配当要求を要しないで配当にあずかる担保権者の受ける配当金内から徴収されるとするものであつても同様である。けだし、民事執行法八七条一項二号と四号とで配当要求の要否を異にする所以は、執行債権等同項各号所定の権利者の地位の区別によるものであるから、もともと交付要求を要するとされ、当然には配当を受け得ない国税債権が徴収の対象を異にすることをもつて右の区別を左右するものではないからである。以上を要するに、徴収法二二条五項と同法八二条のそれとで、交付要求の趣旨において控訴人主張のように異なるものがあつても、右のいずれによるかにより、国税債権自体の配当手続上の地位に変更を来すものではない。それゆえ、以上の見地からしても、右二二条五項の交付要求の場合も、配当要求の終期の制約を受けるものといわなければならない。

2 控訴人は、徴収法二二条五項の交付要求の場合、税務署は配当要求の終期を知り得ないと主張する。しかし、民事執行法四九条二項は配当要求の終期を公告すべきものと定めているのであり、又、滞納者がその財産を他に譲渡したとき、税務署側においてこれを探知するのは必ずしも困難ではないといえるから、この点も未だ前記1の判断を左右しない。

3  控訴人のその余の主張も、原判決及び前記1の判断を左右するものではなく採用できない。

二以上の理由により、被控訴人の請求は理由があり、原判決は相当であるから、民訴法三八四条により本件控訴を棄却する。

訴訟費用の負担につき、同法九五条八九条適用

(裁判長裁判官菅本宣太郎 裁判官秋山賢三 裁判官山下薫は転官のため署名押印することができない。裁判長裁判官菅本宣太郎)

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